



- 島根県大田市にある「大田市立病院」で放射線科医長として働く松浦先生。
院内外から寄せられる検査画像を丁寧かつ迅速に読影し、患者さんに最適な医療を届けるため、日々診断精度の向上に努めています。
プライベートでは一児の母。世界遺産・石見銀山の町として知られる大田市大森町での暮らしは、自然や地域の人の温かさに恵まれ、とても心地よいそうです。
今回は、仕事と子育ての両立、そして島根で働く魅力について伺いました。 

島根で生まれ育ったこともあり、自然と地元で働きたいという思いがありました。進路を考える中で「地域で必要とされる仕事に就きたい」という気持ちが強くなり、医師の道を選びました。
放射線科を選んだのは、初期研修でさまざまな診療科をまわる中で、一番自分に合っていると感じたからです。指導医の先生に熱心に教えていただいたことをきっかけに放射線診断に興味を持ち、画像から病気を読み解く奥深さや、IVRの手技や学術的な魅力に惹かれて専攻しました。
また、将来のライフステージの変化をイメージし、自分にはどんな働き方が向いているのかも考えました。放射線科は女性医師が多く、子育てをしながら働く先輩が身近にいたことも大きな安心につながりました。

現在は放射線診断専門医として、院内や近隣病院から届くさまざまな検査画像の読影をしています。自らの診断が治療方針に直結するため、患者さんに適切な治療が届くよう丁寧な読影を心がけ、疾患の特定や病態の把握に努めています。
多くの診療科と連携し、医師から直接相談を受ける機会も多くあります。チームとして診療に関わり、診断の核心に迫っていく過程はこの仕事ならではの面白さです。
また、画像診断はすべての診療に欠かせないため、研修医向けのレクチャーにも力を入れています。基本的な読影のポイントが身につけば、どの診療科に進んでも必ず役立ちます。学ぶ人の成長に寄り添えることも、この仕事の大きな喜びです。

仕事と子育ての両立を無理なく続けられる働きやすさを実感しています。子どもの急な体調不良による早退やお休みにも、周囲が柔軟に対応してくれるため、安心して働くことができます。
また、子育て中は 「できないこと」に目が向きがちですが、この職場には挑戦したい気持ちも尊重してくれる雰囲気があります。画像診断が好きで、もっと経験を積みたいという私に、上司は「余裕があればやってみて」と、さりげなく背中を押してくれます。子育てに配慮していただきながら、自分のやりたいことにも前向きに取り組める環境は本当にありがたいです。
子どもが生まれてから、自分のために使える時間は以前より少なくなりましたが、その一方で限られた時間を有効に使う工夫が身についたと感じています。朝早く起きて勉強することを日課とし、教科書やタブレットを常に携えて、移動中や待ち時間などの隙間時間も大切にしています。時には、眠っている子どもを抱っこしながら教科書を読むこともあります。
時間や場所を選ばず学び続けられることは、この分野の大きな魅力です。今後も知識を一つひとつ積み重ね、日々の診療に生かしていきたいと考えています。

島根で暮らしていて感じる一番の魅力は、やはり「人の温かさ」です。
松江市で生まれ育ち、益田市で初期研修をして、現在は大田市大森町に住んでいます。暮らす地域は変わっても、どこもあたたかく迎えてくれる空気に包まれています。
私たち家族が暮らす大田市大森町は、世界遺産・石見銀山の歴史が息づくまち。自然豊かで、古いまち並みと文化が残る穏やかな地域です。
今現在の住まいは古民家を改修した家。この家に出会えたのは、保育園の保護者の方が「近くに住めるように」と紹介してくださったおかげでした。困っているときに自然と手を差し伸べてくれる優しさに、心から救われました。
また、まち全体で子どもを見守ってくれる安心感も大きな魅力です。息子が一人で近所のお店に買い物に行けば、店の方がそっと見守ってくれる。まるで「はじめてのおつかい」のような光景が日常にあります。地域のつながりがしっかり息づく場所で子育てできることに、とても感謝しています。


大切にしているのは、息子が「自分で考え、判断し、生きる力」を身につけられること。
そのために、挑戦も失敗も含め、さまざまな経験をしてほしいと考えています。
息子が通う大森さくら保育園は、その力を育んでくれる場所です。園舎は石見銀山の通りに面した武家屋敷の敷地内にあり、かまどでご飯を炊く、ロケットストーブに火をつけるなど、家ではできない体験を日常的に行います。自然の中で思いきり遊び、のびのびと過ごす姿を見て、この園を選んで良かったと実感しています。
また、近くにコンビニがない「ほどよい不便さ」も、暮らしの豊かさにつながっています。「これが食べたい」と言われても、なければ家にあるもので工夫したり、時には夜遅くに一緒にホットケーキを焼いたりすることもあります。そんな時間が、家族の大切なひとときになっています。欲しいものがすぐに手に入らないからこそ、工夫しながら家にあるもので楽しむ時間が増えました。
さらに、地域の中で過ごすことでコミュニケーション力も育まれています。友だちとケンカや仲直りをしながら人間関係を学び、外に出れば年齢に関係なく近所のお兄ちゃん・お姉ちゃんが遊んでくれます。幼い頃から人との関わり方や社会のルールを自然と学べる環境で子育てができていることは、とても恵まれていると感じています。心身ともに日に日にたくましくなっていく息子の姿を見て、これからの成長がますます楽しみです。


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石見銀山まちを楽しくするライブラリー
石見銀山にある古民家を活用した図書スペース。
お気に入りの絵本を読んだり、併設カフェで過ごしたりと、親子でよく訪れます。
外には芝生広場や浅いプールもあり、自然の中でゆったりと遊べるお気に入りの場所です。

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保育園の連絡ノート
慌ただしい毎日の中で、子どもの成長や様子を書き留める時間を大切にしています。
いつか息子が読み返したとき、ここに込めた思いが伝われば嬉しいですね。
大田市立病院で働き始めて一年半。ここでは、放射線科に限らず、各診療科・各職種との垣根がなく、温かい雰囲気の中で充実した日々を過ごしています。職場の皆さん、そして地域の人に支えられながら、思っていた以上に自分に合った働き方ができていると感じています。
大森のまちでの暮らしはとても穏やかで心地よく、仕事も子育てもどちらも大きな安心感があります。この場所だからこそ、家族との時間を大切にしながら働き続けることができています。移住してまだ日は浅いですが、すでに「第二のふるさと」と呼びたくなるほど、このまちに親しみを感じています。
人口約400人の小さな町ですが、この暮らしに惹かれて移住してくる人や子どもが増えていると聞きます。
新しい人を温かく迎えてくれるまちで、子育て世代はもちろん、仕事と家庭のバランスを大切にしたい人にとてもおすすめです。
ぜひ一度訪れて、このまちの魅力と温かさに触れてみてください。きっと、ほかでは味わえない豊かさを感じられるはずです。


大田市立病院は、島根県のほぼ中央、世界遺産の石見銀山遺跡や国立公園三瓶山など、歴史と自然文化に恵まれた大田市に所在する中核病院です。昭和26年に国立大田療養所として創設、平成11年に大田市へ移管され、同年大田市立病院として開院しました。
平成23年10月に島根大学医学部との連携により、総合医療学講座及び大田総合医育成センターを設置。センター教員のほか大学や病院の医師が共同で総合医の育成に取り組んでいます。また、近年では近隣診療所に医師派遣をするなど、大田圏域(二次医療圏)の地域医療を積極的に支援しています。


