



- 島根県浜田市にある「浜田保健所」の医師として働く㯃松先生。
地元浜田市に貢献したいと自身の強みと経験を活かし、医療機関とさまざまな行政機関の橋渡し役も担いながら、地域住民に寄り添える仕事にやりがいを感じているそうです。プライベートでは二児の母で、子育てと仕事を両立しながら充実した日々を送られています。そんな㯃松先生に、子育てやプライベートの話を交えながら島根で働く魅力についてお話を伺いました。

子どもの頃から「将来は自分が生まれ育った浜田で働きたい」という思いがありました。浜田は方言がきついので一見すると気性が荒い印象を持たれやすいのですが、実は優しくて情に厚い人が多い地域。地元愛が強く、伝統や文化、人とのつながりを大切にしながら愛着をもって暮らしているのが伝わってきます。私はそんな浜田の人が好きで、地域に貢献できる職業は何かと考えた時に、浮かんだのが医師か公務員でした。
地方の課題として少子高齢化が深刻ですが、浜田も例外ではありません。浜田の人たちがずっと安心して暮らせる地域を守りたい、その想いから医師の道を目指しました。そして、無事に医師となり地元病院で勤務したのち、現在は浜田保健所の職員として働いています。仕事の内容はガラリと変わりましたが想いは変わりません。医療現場を経験したからこそ身に付いた知識や対応力を自分の強みとして、今後もさまざまな場面で発揮していきたいと思います。医師であり公務員でもあり、結果的にどちらも叶ったわけですが、地域に貢献できる今の働き方にとても満足しています。
臨床研修後、脳神経外科医として出雲と浜田の病院に勤務しましたが、そこで感じたのが患者さんの暮らしに密接した長期的な健康サポートの必要性でした。患者さんの中には、独居や家族の支援を得にくい方もいます。せっかく病気が治っても家に帰るのが難しい患者さんも多く、そんな状況を目の当たりにする度に胸が痛みました。
そんな中、患者さんの退院支援に携わる機会が増えたことをきっかけに、さまざまな行政機関や多職種の人とのやり取りに楽しさを感じるように。治療だけでなく多面的に患者さんの健康を支える仕事に興味を持つようになりました。
現在は、結核や難病患者さんのサポート、生活習慣病予防の啓発活動などを行っています。患者さんのサポートでは、ちょっとした悩みや不安にも耳を傾け、治療が最後まで行われるよう支援しています。さまざまなサービスの情報提供も行い、生活の中で困っていることに適切な提案ができるよう心がけています。また、浜田出身とわかると心を開いてもらいやすいので、気軽に相談できるよう積極的にコミュニケーションをとって、話しやすい雰囲気作りを意識しています。
以前は臨床医として診察や治療に専念していましたが、ここでは活動の幅が広がり、より一人ひとりの暮らしに寄り添ったサポートができていると感じます。無事に治療を終えて回復された報告を受けると嬉しいですし、生活がしやすくなったと言っていただけると大きなやりがいを感じます。

浜田は子育てに優しい環境が整っていて、行政からの支援も充実しています。特に助かっているのが産後ケアです。退院後から1年間に最大7回も利用できて、助産師さんによる身体のケアや子育て相談はもちろん、リラックスタイムとして足湯や整体なども受けることができます。現在、2人目の育休中でこれまでに5回ほど利用しました。上の子は2歳になりますが、それぞれ個性が違うことはわかっていても不安になってしまうのが子育て。助産師さんが親身になって相談に乗ってくださるので、とても心強いです。また、「子育て支援センターすくすく」は絵本やおもちゃがたくさん揃っていて、子育て講座や交流会などもあるのでよく利用しています。
さらに市内には、「浜田市世界こども美術館」や「しまね海洋館アクアス」、その隣にある「アクアスランド」や三隅発電所内にある「みすみわくわくらんど」など大きな公園もあって、子ども連れで出かけやすい施設が多いのも嬉しいですね。息子はサッカーが大好きなので、天気が良い日は家族で公園に出かけて子どもたちが満足するまで一日中遊んでいます。
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また、子どもが通っている保育園では食育に力を入れていて、さっきまで生きていた魚を園長先生が自ら子どもたちの目の前で捌いて見せてくれるなど、匂いを嗅いだり、手で触れたり五感を使って食を学ぶ貴重な体験をさせてもらっています。山と海が身近にあり、「食」への理解や興味を自然と育むことができる環境で子育てができるのは、とても恵まれていると思います。
息子は今プラレールに夢中。お風呂から上がると一緒に遊ぶのが日課で、自然と親子のコミュニケーションが深まる時間になっています。上手く線路が繋がらない時は夫がそっと助け舟を出すこともありますが、本人なりにいろいろ考えながら工夫を凝らして遊んでいるので、子どもの思いを尊重して創造力を邪魔しないよう見守っています。
それから神楽も好きで、散歩は必ず浜田駅にある「どんちっち神楽時計」を見に行きます。島根県西部は伝統芸能として昔から石見神楽が身近で、神社の秋祭りでは夜通し神楽を舞う風習があります。浜田は「神楽のまち」とあって子どもから大人まで神楽好きが多く、私自身も子どもの頃に習っていました。今も神楽を見ると熱くなりますね!息子も神楽好きのDNAをしっかり受け継いだようです。娘も興味があるのか、神楽の大きな音にも動じず見入っています。いつか兄妹で神楽を舞う姿が見られたら嬉しいですね。
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散歩が好きで、気分転換したい時は浜田市の瀬戸ヶ島にある宮の浦に出かけます。マリン大橋を渡りながら景色を楽しんだり、浜辺から眺める海の美しさに癒されています。こじんまりした小さな浜辺ですが、地元の人に愛されている海水浴場で、知る人ぞ知る絶景スポット。穏やかな波の音を聞いているだけで心が安らぐので、癒されたい人におすすめの場所です。
御朱印集めも好きで、時間を見つけてはあちこちの神社を巡り、御朱印帳は3冊目に突入しました。軽い気持ちで始めたはずが、すっかり御朱印集めの魅力にハマってしまい(笑)。研修医時代に2か月間京都にいたのですが、休日には1日で10ヶ所まわったことも。なかでも、お気に入りは今宮神社の御朱印です。神社によってデザインが違っていて、そこでしか手に入らないのが魅力の一つ。見返すたびに訪れた場所の思い出を振り返ることができます。島根にも神社がたくさんあるので、子どもたちがもう少し大きくなったら一緒に御朱印集めを楽しみたいですね。
- 浜田市弥栄町でつくられる弥栄米
大自然に囲まれた弥栄町は秘境奥島根とも呼ばれ、清らかな空気と水で育ったお米の美味しさは格別です。ツヤがあってみずみずしく、モチモチ食感とほのかな甘みが特徴的で、どんなおかずにも合います。この美味しさを味わうおすすめの店は「ケンボロー」。弥栄米のご飯に、こだわりのブランド豚肉「芙蓉ポーク」など地元食材が美味しく味わえる人気店です。
- 実家で飼っている愛犬
大学時代に迎え、現在13歳となったトイプードルの「ダン」は大切な家族の一員です。ふわふわの毛が気持ち良くて、なでるだけで癒されます。とても温厚で人懐っこい性格。実家に遊びに行くと、よく子どもたちの子守をしてくれます。
島根は安心できる場所。仕事も子育ても自分時間もバランスよく充実した日々を送っています。空気が澄んでいて豊かな自然に美味しい水と食、そして地域を大切に思う人の温かさがあります。住めば都、とにかく来ていただいたら絶対に納得できると思います。島根出身の方も一度は離れたとしても、いつかは地元に帰ってきて島根の医療を一緒に守って欲しいですね。
現在、医療従事者の人材確保に向けて、医学生の地域医療実習の企画や、浜田市が主催する中高生を対象とした地域医療体験にも携わっています。地域に密着した医療現場では、患者さんの生活背景に寄り添った医療の大切さを学ぶことができます。例えば、お米を作っている患者さんの場合、田植え時期に合わせて通院期間を調整したり、田植え後の腰痛を想定するなど細やかな関わり方をしています。実際に参加者からは、医師と患者さんとの間に信頼関係が築かれている様子に感動したという声や、具体的な地域課題に気づけたという感想が多く寄せられています。ぜひ、幅広い視野を身に付けることができる地域医療の魅力を体感しに来てください。


浜田保健所は、島根県西部に位置する浜田市に所在しており、浜田市、江津市の2市を管内としています。地域の健康と福祉を支えるため、難病や精神保健に関する相談を受け付けているほか、結核・感染症対策、薬事・食品衛生・環境衛生に関する監視指導など専門性の高い業務を幅広く行っています。さらに在宅医療・介護連携の推進、生涯を通じた健康づくりの啓発などの取組みも行っています。