



- 島根県益田市にある「益田赤十字病院」で呼吸器内科の医師として働く新井先生。患者さんの病気や症状だけを診るのではなく、暮らしや人生にも目を向けることが大切と語る先生のモットーは「気さく」の一言。何でも相談しやすいよう日頃からフラットな関係づくりを心がけているそうです。そんな新井先生に、子育てやプライベートの話を交えながら島根で働く魅力についてお話を伺いました。

島根は田舎で不便さも感じますが、自然豊かな環境や人との温かい繋がりなど、ここにしかない良さがあります。
生まれも育ちも益田で、実家は山々に囲まれた小さな集落にあり、家の周りには野原が広がっています。すぐ近くには映画にもなった「高津川」が流れていて、日本の原風景のようなのどかな場所で育ちました。何をするでもなく景色を眺めながら空を見上げて、鳥やセミの声に耳を傾ける、それだけで自然と心が落ち着きます。
子どもの頃は、山や川で日が暮れるまで遊んでいました。こんな大自然の中で思い切り遊べるのも田舎ならではの良さ。今でもよく家族を連れて、川で魚釣りや水遊びを楽しんでいます。
大学と研修医時代に益田から数年離れましたが、再び戻ってきた時には「お帰り」と皆さんに温かく迎えてもらって嬉しかったです。ここは良い意味で昔から変わらない町(笑)。慣れ親しんだ地元の空気感は、やはり居心地が良いですね。

休日は家族で過ごす時間を大切にしていて、最近はみんなで野菜作りに夢中です。「自分で野菜を作ってみたい。」という妻の一言をきっかけに、昨年の夏頃から家庭菜園を始めました。息子はちょうど土遊びが楽しい時期だったので、畑を耕す時も喜んで手伝ってくれました。
これまでに作ったのは、ナス、ピーマン、キュウリ、ニンジン、小松菜にサツマイモなど。手探りですが、季節に合わせて色々な野菜作りにチャレンジしています!収穫した野菜が食卓に並ぶと嬉しいですね。
昔から知りたいと思ったらどんどん調べたくなるタイプ。葉っぱを見て病気を疑うところや、一つひとつ経験しながら知識が増えていく様子は仕事に通ずるところも。どうやったら上手く育つのか、気候や環境に合わせて土づくりや風よけなど試行錯誤しながら改善を加えていくのが面白いですね。
自分たちで作るようになってから他の人が作る野菜にも興味が湧いてきました。週末には家族で道の駅を巡って、色々な地元野菜の味比べも楽しんでいます。
子どもの探究心を阻害したくないので、なるべく興味を持ったタイミングを大事にしながら一緒に楽しむことを心掛けています。現在2歳半になる息子は好奇心旺盛で、いつも「これ、な~に?」と聞いてきます。また、乗り物が好きで新幹線の名前当てクイズも出してくれます。家族旅行では、時刻表を調べて飛行機や新幹線を見に行くなど、今は基本的に息子が喜んでくれるスポットを中心に出かけることが多いですね。
イヤイヤ期で自己主張しつつも、会話で意思疎通がとれるようになってきました。どこで覚えたのか、逆に何でそんな言葉知っているの?と驚くことも。成長するにつれて色々な反応を見せてくれるのが子育ての面白さだと感じています。
最近は、たまたまイベントで観た神楽にハマったようで、毎日家でネット動画を観ながら真似して舞っています。仕事から帰ると笛や太鼓を渡されて「パパも踊って!」と、容赦なくお誘いがかかるので、息子が満足するまで一緒に舞っています(笑)。
今まで神楽には特に関心がなかったですが、物語が分かってくると面白いですね。実は新幹線も息子が興味を持つまで、あんなにたくさんの種類があることを知りませんでした。こうやって子どもと過ごすなかで、親も色々なことに気づかせてもらっています。
学生時代からずっとスポーツをしていたので体を動かすことが好きで、気分転換にもなっています。考え事をしながらランニングしていると、だんだん無になって、そのうちどうでも良くなってきたり(笑)。汗を流すと気持ちがスッキリしますし、自分を見つめ直す時間にもなっています。
野球やゴルフも好きで、職場仲間とも楽しんでいます。益田赤十字病院の野球大会もあって、医師や看護師だけでなく多職種のメンバーが集まります。練習や試合を通して自然と交流できることが職場の人間関係を築くきっかけにもなっています。

とにかく「気さく」をモットーに患者さんが相談しやすいよう、日頃からフラットな関係づくりを心がけています。医師として病気を治療することが役目ですが、症状だけを見るのではなく、暮らしや人生も含めて患者さんと向き合うことが大切だと考えています。
地域性もあって高齢の患者さんが多く、深刻な病状に直面することや、治療を進める上で厳しい決断を迫られることもあります。
その治療が果たして本当に良いのか?予後も見据えて、本人や家族の望みを叶えるにはどうすべきか。ベストなバランスを見極めながら治療方針を追求することへの難しさを感じる時もあります。また、家族が遠方におられる場合も多く、様々な状況に合わせて複合的なケアが求められるため、普段から信頼関係を築いておくことが必要です。そんな中、患者さんから「先生だけん何でも話せるわ~。」と言ってもらえると本当に嬉しいですね。
小さい頃から地元のおじいちゃんおばあちゃんは身近な存在で、皆さんの温かさに見守られながら育ってきました。島根は心のふるさと。自分を飾らず、ありのままでいられる場所です。きっと、ここで育っていなかったら今のようにはなっていないでしょうね。
自分をつくってくれたルーツともいえる場所で、これからも気さくな医師として皆さんのお役に立ちたいですね。
▲研修医時代に書いた「目指す医師像」
- 畳のインソール
毎日履くスリッパには、畳のインソールが欠かせません。
イグサの香りが好きで、履き心地も良く、夏も冬も一年中快適に過ごせます!
- 息子のほっぺ
この“ぷにぷにほっぺ”の感触がたまらなくて、ついつい触ってしまいます。親ばかですが、愛しの息子のかわいさに毎日癒されています。
以前は、「なんて人口が少ないところに生まれたんだ?」と思ったこともありました(笑)。でも、それをネガティブに捉えるか、ポジティブに捉えるかは考え方次第です。これまで大変なこともたくさんありましたが、今まで選択してきた全てに後悔はありません。2回目の人生も同じ人生が良いと思うくらい、充実した日々を送っています。
人生は、過去に戻って変えることはできません。今しか生きられませんし、変えられるのは未来だけ。だからこそ次はどうしようか?を考えていくのみです。なので、皆さんも今ある環境を当たり前と思わず、たくさんの経験をしていく中で、いかに自分らしく楽しいと思えるか意欲的に突き詰めて欲しいですね。


島根県最西端の益田市にある益田赤十字病院(284床)は、昭和29年に益田市外11村病院組合美濃共存病院から日本赤十字社に移管され、益田赤十字病院として開院しました。
昭和32年に益田市赤城町に新病院竣工後、昭和46年に益田市乙吉町に新築移転、平成27年に同地で新病院が竣工し今に至ります。
益田圏域の地域医療支援病院として「地域包括ケアシステムの構築」を進めるにあたり、益田地域医療センター医師会病院・津和野共存病院・六日市病院等と医療機能連携協定を締結し、様々な相互支援を行うことで急性期・高度急性期から慢性期まで一貫してケアできるよう連携を図っています。